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大阪高等裁判所 昭和30年(ネ)1081号 判決

姫路市東山町八三七番地

控訴人

神先清之進

右訴訟代理人弁護士

転馬作次郎

姫路市本町

神飾税務署長

被控訴人

酒井亮一

指定代理人 木村傑

右当事者間の所得税更正決定無効確認等請求控訴事件につき当裁判所は左のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は原判決を取消す被控訴人の控訴人に対する昭和二十八年七月二十五日付通知書による昭和二十五年度及び昭和二十六年度の所得税更正決定並びに昭和二十九年七月二十六日なした右決定に基く別紙目録記載の不動産に対する公売処分の無効なることを確認する訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は控訴代理人において昭和二十五年及び昭和二十六年度の所得税更正決定は訴外田上栄蔵鵜川重義が製塩を闇売して得た利益を控訴人の所得とみなしてなしたもので課税者を誤り重大且つ明白な瑕疵の存するものであるから当然無効である。控訴人よりさきに提出しておいた昭和二十五年及び昭和二十六年度所得税更正決定に対する審査請求につき大阪国税局長は昭和三十年八月二十六日付で原処分は一部を取消すと決定した。その審査決定によると昭和二十五年度分所得税につき総所得金額二十三万二千円税額五万一千九百五十円過少申告加算税千四百五十円昭和二十六年度分所得税につき総所得金額三十六万一千円税額七万四千八十円過少申告加算税二千百五十円となつており総所得金額は両年度分共原処分より著しく減じられておるのであつてこの一事によつても原処分が疎漏であることを推知することができる。

と述べ被控訴代理人において昭和二十五年度分所得税につき総所得金額四十二万九千四十四円税額十四万七千百五十円過少申告加算税六千三百円昭和二十六年度分所得税につき総所得金額六十万四千四百二十円税額十七万七千六百二十円過少申告加算税七千三百円とする更正決定がなされたものであると訂正した外は原判決記載のとおりであるからこれを引用する。

証拠として控訴代理人は甲第一、二号証を提出し当審証人堀内平、橋詰勝三の証言及び当審における控訴本人尋問の結果を援用し被控訴代理人は甲第一、二号証の成立を認めた。

理由

控訴人の主張は要するに本件所得税更正決定は昭和二十五年及び昭和二十六年度における控訴人の所得の認定を誤つているというに帰するもので重大かつ明白な瑕疵ある行政行為と認められないからかりに控訴人の所得につき右更正決定の認定に控訴人主張のような誤りがあるとしても右更正決定を当然無効となすことはできないのみならず成立に争なき甲第一、二号証によれば控訴人の審査請求に基き大阪国税局長はすでに控訴人主張のように更正決定を一部取消す決定をしたことが明らかであるから審査決定によつて取消された部分に対してはもはや更正決定の無効確認を求める利益も欠くに至つたものというべきである。なお審査決定によつても取消されずその認定する所得と修正確定申告書における所得との差額に相当する所得もないという事実については控訴人の全立証によつてもこれを確認することができない。従つてまた更正決定の無効を前提とする公売処分の無効請求も採用することができない。結局原判決は相当であつて本件控訴は理由がない。

よつて本件控訴を棄却すべく民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用し主文のように判決する。

(裁判長判事 松村寿伝夫 判事 竹中義郎 判事 南新一)

目録

一、姫路市東山五九一の一

家屋番号 三七五番

木造瓦葺平家建居宅

建坪 二十二坪

木造瓦葺平家建便所

建坪   五坪

二、姫路市東山五八九の一

家屋番号 三五五の四

木造瓦葺平家建居宅

建坪   九坪

木造瓦葺平家建炊事場

建坪   五合

木造瓦葺平家建便所

建坪   五合

三、姫路市東山五八九の一

家屋番号 三五五の五

木造瓦葺平家建居宅

建坪   九坪

木造瓦葺平家建炊事場

建坪   五合

木造瓦葺平家建便所

建坪   五合

四、姫路市東山五八九の一

家屋番号 三五五の七

木造瓦葺平家建居宅

建坪   九坪

木造瓦葺平家建便所

建坪   五合

五、姫路市東山五八九の一

家屋番号 四二九

木造瓦葺平家建居宅

建坪   六坪

木造瓦葺平家建居宅

建坪   五坪五合

六、姫路市東山乙南山田五九一の一

宅地 三百六十九坪

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